留学は就活で有利になる?元面接官が話す、評価される留学とされない留学

元面接官が話す・留学は就活で有利になるか

「留学すれば就活で有利になりますか」——留学を考えている大学生から、いちばん多く受ける質問です。

先に結論をお伝えします。留学は、やり方を間違えると就活で不利になります。有利にもなるし、不利にもなる。その境界線がどこにあるのかを、この記事でお話しします。

私は今でこそ留学エージェントをしていますが、前職では一日に何人もの学生と面接をしていました。スーツを着て、学生を評価する側にいた人間です。その後13年以上、年間1,000件以上の留学相談を受けてきました。評価する側と、送り出す側の両方を見てきた立場から、正直に書きます。

この記事の30秒まとめ

  • 「英語力が上がりました」は評価されません。同じことを書く学生が毎年何百人もいるからです
  • それどころか、深掘りされて答えられないと「薄い経験だった」という印象を残します(不利に転ぶパターン)
  • 評価されるのは①困難な経験をした ②自分でどう向き合ったか分析できる ③言葉で伝えられるの3つが揃った人
  • 留学先の国名で評価が上がることは、まずありません。差がつくのは、その先で何を経験したか

有利にならない留学:「英語力が上がりました」が評価されない理由

留学すれば就活で有利になる。そう思っているなら、半分は間違いです。

理由はシンプルで、留学して英語を学んできた人は、日本中にごまんといるからです。英語力を上げるだけの留学は、差別化になりません。

エントリーシートに、毎年何百枚と届く文章

採用担当がどう見ているかを想像してみてください。エントリーシートを開くと、「留学して英語力が上がりました」という文章が毎年何百枚と届きます。英語ができる学生はもう珍しくありませんし、TOEICのスコアだけで判断することもありません。

極端な言い方をすれば、英語だけの留学をアピールするのは、履歴書の特技欄に「旅行経験あり」と書くようなものです。体験したこと自体は事実でも、それが仕事にどう役立つのかが見えてきません。

「留学しました、英語が話せます、英語を活かした仕事がしたいです」——この流れを読んだとき、面接官の頭の中では(あ、これテンプレだ)というアラートが、静かに、でも確実に鳴っています。

誤解しないでいただきたいのですが、留学で変わったことを語ること自体は良いことです。大事なのは、留学した実績を話すのではなく、その経験の中で何を考え、どう動いたかを語れるかどうかです。

英語力を上げることは、留学するなら当然の大前提です。ただ、大前提は評価の入口であって、差がつくポイントではありません。

深掘りされた瞬間に崩れる(不利に転ぶパターン)

さらに言うと、下手に留学を語ると、マイナスに働くことがあります。

「英語力が上がりました」という一言を、面接官がそのまま深掘りしてくることがあります。「具体的にどう伸びたんですか」「その経験は仕事にどう活きますか」と聞かれた瞬間に、話がふわっと崩れる学生は少なくありません。

準備した一言だけで乗り切ろうとした留学経験は、深掘りされた瞬間にボロが出ます。そして「薄い経験だったんだな」という印象だけが残ります。これが、留学が有利ではなく不利に転ぶパターンです。

お金と時間をかけて留学したのに、その話をしたせいで評価が下がる。これがいちばんもったいないパターンです。

「留学のガクチカがかぶる」と感じているなら、その感覚は正しい

就活の準備を始めた学生から、こんな相談を受けることがあります。「留学をガクチカ(学生時代に力を入れたこと)にしようと思ったけれど、周りにも留学経験者がいて、話がかぶる気がする」と。

その感覚は、正しいです。かぶっている自覚があるなら、面接官からはもっとはっきりかぶって見えています。

ただ、ここで多くの学生が対処を間違えます。かぶるのは「留学」という題材のせいではなく、語っている中身が「英語力が伸びた」で止まっているからです。題材を変えてアルバイトやサークルの話に逃げても、同じ理由でまたかぶります。

実際、面接官がエントリーシートを読むときに見ているのは、何をしたかという題材ではありません。その中で何につまずき、何を考え、どう動いたかです。ここが具体的であればあるほど、同じ「留学」という題材でも、まったく違う話に聞こえます。

逆に言えば、かぶらない話をするために特別な体験は要りません。次の章でお話しする3つの条件を満たしていれば、留学というありふれた題材のままでも十分に差がつきます。

評価される留学の3つの条件:困難・分析・言語化

では何が評価されるのか。私が見てきた相談者のうち、留学経験を就活にうまく活かせた人たちに共通していたのは、次の3つでした。

条件中身
①困難困難な経験をしていること
②分析その困難に自分でどう向き合ったかを分析できていること
③言語化それを自分の言葉で伝えられること

この3点セットが揃っていると、面接で一気に差がつきます。

ここで言う「困難」は、授業についていけなかった話ではない

困難というと、授業についていけなかった、英語が通じなかった、という語学学校の中の話を思い浮かべる方が多いです。もちろんそれも困難ではあります。ただ、面接官の印象に残るのは、留学中に語学以外の目標を自分で立てて、それに向けて動き、壁にぶつかりながら何度も取り組んだというストーリーのほうです。

たとえば、留学中に現地の貧困問題が気になって自分で取材に行った。自分なりの解決アイデアを考えて、現地の人に協力を仰いでやってみた。うまくいかなかったけれど、そこで気づいたことがあった。こういう経験は、語学力の話とは次元が違います。

大きな成果を出す必要はありません。自分で問いを立てて、動いて、壁にぶつかって、そこから何かを感じた。その一連を語れるかどうかです。

乗り越えられなかった経験でも構わない

意外に思われるかもしれませんが、成功談である必要はありません。うまくいかなかった事実と、そこから自分が何を感じ、何を学んだのかをきちんと語れる人は、「この人は本物の経験をしてきた」と面接官に伝わります。

準備してきた答えだけを話す学生は、想定外の質問を一つ投げられると途端に詰まります。その瞬間、目が泳ぐんですよね。面接官側からすると、すぐにわかります。

一方、自分の言葉で経験を語れる人は、どんな角度から聞かれても自分の話として答えられます。その差は、どれだけ本物の経験をして、それを自分で考え抜いてきたかから生まれます。

面接官が実際に使う3つの質問

私たち面接官は、この3点セットが揃っているかを見抜くために、3つの質問を使います。就活生の側から見れば、この3つに自分の言葉で答えられるかどうかが、留学経験が武器になるかの判定基準ということになります。

①一番困ったことは?

そもそも困難があったのかを見ています。順調に楽しく過ごしただけの留学は、ここで止まります。

②そのとき最初に何をした?

自分で動いたのかを見ています。誰かが助けてくれた話しか出てこない場合、評価は伸びません。

③今、同じことが起きたらどうする?

そこから何を学んで、言語化できているかを見ています。ここで答えが具体的な人は、経験が身についています。

よく見てください。この3つの質問、国名で答えられるものが一つもありません。「アメリカに行きました」も「フィリピンに行きました」も、答えにならないんです。

出発前にこの3つを知っておくだけで、留学中の過ごし方が変わります。「これは①の答えになるな」と思える出来事に、自分から近づけるようになるからです。

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フィリピン留学が、この経験を作りやすい理由

では、どこに留学すれば就活で評価される経験ができるのか。欧米でなければダメなのでは、と思っている方も多いのですが、そんなことはありません。

意外に思われるかもしれませんが、留学先の国名で評価が上がることは、まずありません。評価が分かれるのは、その先です。

アメリカやカナダで何の壁もなく快適に過ごして帰ってきた人と、フィリピンで毎週のように壁にぶつかって、そのたびに自分で解決してきた人。面接官として断言しますが、話に厚みが出るのは圧倒的に後者です。

フィリピンの語学学校で留学生同士が英語で議論している様子

理由①:困難にぶつかりやすい

フィリピンは、計画どおりにいかないことが多い場所です。停電、スケジュールの変更、言葉が通じない場面、想定外のトラブル。日本の感覚では「不便」と感じることが、留学中に何度も起きます。フィリピン歴13年以上の私でも、いまだに想定できないトラブルに見舞われます。

さらに、経済格差や貧困といった現実が、日常の中で目に飛び込んでくる場所でもあります。欧米にも同じ問題はありますが、フィリピンではそれが生活圏の中にあります。

不便をただの不便として受け取るか、自分が動くきっかけとして捉えられるか。その違いが、帰国後の面接での話の厚みに直結します。

理由②:自分で動いて向き合いやすい

何かに挑戦しようとしたときの、費用のハードルが低いことも大きな違いです。欧米と比べて生活費が安く、活動にかかるコストを抑えられます。留学費用そのものが欧米の3分の1から半分程度で済むため、3ヶ月以上の滞在も現実的な選択肢になります。期間が長いほど、経験は深く積み重なります。

もう一つは、協力者が見つけやすいことです。日本で見知らぬ人に声をかけて何かを一緒にやるのはハードルが高いですが、フィリピンには交渉しやすい文化があります。現地の人がフレンドリーで、「手伝ってほしい」と言ったときに話を聞いてもらいやすい。

期間別の費用は、それぞれのページにまとめています。

実例:おにぎりを売り続けた学生

起業や社会問題のような大きなテーマである必要はありません。何かを自分で売ってみた、サービスを提供してみた。それで十分です。

実際に、フィリピンで留学しながらおにぎりを販売した日本人がいます。最初は誰も見向きもしなかったそうです。フィリピンの方からすると、おにぎりは「謎の黒い三角形」ですから。それでも値段や売り方を変えながら試し続けたら、じわじわ売れるようになったといいます。

抹茶ラテを売り歩いた人もいます。日本人が思っている以上に、日本のトレンドや人気の食べ物はフィリピンで受け入れられています。リサーチして、試して、失敗して、また試す。規模は関係ありません。自分で考えて動いた経験がある人は、面接で他の学生とは違う話ができます。

もしあなたが面接官だったら、「留学して英語が話せるようになりました」としか言えない学生と、「最初は誰も買ってくれなかったけれど、売り方を変えながらおにぎりを売り続けました」という学生。どちらを採用したいでしょうか。

いつ行くのが正解か(学年と時期の考え方)

就活を意識するなら、時期の設計も大事になります。一般的な就活スケジュールを前提にすると、考え方は次のとおりです。

大学1〜2年:いちばん自由に動ける

就活まで時間があるので、期間も内容も自由に決められます。3ヶ月以上のまとまった期間を取りやすいのはこの時期です。ここで英語力を上げておくと、3年生以降の活動の選択肢そのものが広がります。

大学3年の春〜夏:就活の直前。逆算が必要

3年生の夏はインターンの時期と重なります。ここに長期の留学を入れるなら、インターンをどうするかを先に決めておく必要があります。短い期間で行くか、思い切って休学するかの判断がここで出てきます。

休学して行く場合:卒業年度が変わることを先に確認する

休学すると卒業のタイミングが変わり、就活の年度も動きます。これ自体は不利ではありません。実際、休学して長期留学に行き、帰国後の就活で結果を出した方は何人もいます。ただ、学校の休学制度(費用・申請時期・上限)は大学によって違うので、行き先を決める前に必ず確認してください。

面接で「なぜ休学したのか」と聞かれたときに、この記事の3つの条件で答えられるなら、休学はむしろ話の材料になります。逆に「英語力を上げるためです」で止まると、1年を使った説明としては弱くなります。

準備の全体像はフィリピン留学の準備ロードマップにまとめています。いつ何をすればよいかの逆算に使ってください。

短期留学でも武器になるか

「1ヶ月や2週間の留学では、ガクチカにならないのでは」という質問もよく受けます。

答えは「なります。ただし、期間の長さを売りにしないこと」です。

面接官は期間の長さを評価しているのではありません。1年行った人でも、①②③が語れなければ評価は伸びませんし、2週間でも自分で問いを立てて動いた人は評価されます。実際、面接で聞かれるのは「何ヶ月行ったか」ではなく「そこで何をしたか」です。

ただ、正直に言えば短期のほうが難易度は上がります。期間が短いぶん、困難にぶつかる回数も、動ける回数も減るからです。だからこそ、短期で行くなら出発前に「何を経験しに行くか」を決めておくことが、長期の人より重要になります。

1〜2週間の費用感は短期留学の費用ページにまとめています。

出発前に決めておくこと

留学で就活を有利にしたいなら、留学先の名前で選ぶのではなく、自分がそこで何を経験するかで選ぶことです。出発前に決めておいてほしいのは、次の3つです。

  1. 英語以外に、もう一つ目標を持つこと。売ってみる、調べてみる、誰かと何かをやってみる。内容は何でも構いません
  2. うまくいかなかったことを記録しておくこと。面接で効くのは成功談より、つまずいた話とそこで考えたことです
  3. 3つの質問に答えられるかを、帰国前に自分で確かめること。答えられないなら、まだ動く余地があるということです

就活で強い人というのは、特別な環境にいた人ではなく、どんな環境でもそこからチャンスを見つけて動いてきた人です。留学はそのきっかけを作りやすいというだけで、行けば自動的に手に入るものではありません。

よくある質問

留学は就活で有利になりますか?

やり方次第です。「英語力が上がりました」だけで終わる留学は、同じことを書く学生が毎年何百人もいるため評価されません。困難な経験をして、それに自分でどう向き合ったかを分析し、自分の言葉で伝えられる人は評価されます。深掘りに答えられないと、かえって「薄い経験だった」という印象を残すこともあります。

就活のためなら、欧米留学のほうが評価されますか?

留学先の国名で評価が上がることは、まずありません。面接で使われる「一番困ったことは?」「そのとき最初に何をした?」「今同じことが起きたらどうする?」の3つは、どれも国名では答えられない質問です。むしろ費用を抑えて長く滞在でき、想定外のことが起きやすいフィリピンのほうが、話の材料は作りやすいと言えます。

短期留学でもガクチカになりますか?

なります。面接官が見ているのは期間の長さではなく、そこで何をしたかです。ただし短いぶん、困難にぶつかる回数も動ける回数も減るので、出発前に「何を経験しに行くか」を決めておくことが長期の人より重要になります。

休学して留学すると就活で不利になりませんか?

休学そのものが不利になることはありません。聞かれるのは「なぜ休学したのか」で、そこに自分の目標と、そこでの経験を語れるかどうかです。「英語力を上げるため」で止まると、1年を使った説明としては弱くなります。なお休学制度は大学ごとに費用も申請時期も違うので、行き先を決める前に確認してください。

英語力ゼロですが、就活に間に合いますか?

英語力ゼロからでも伸びますし、就活で語れる経験も作れます。ただし環境選びと出発前の準備で結果が大きく変わります。詳しくは「英語力ゼロで留学したらどうなる?」のページをご覧ください。

まとめ

  • 留学が就活で有利になるかは、やり方次第。英語力を上げるだけの留学では差がつかない
  • 評価されるのは、困難な経験をして、自分でどう向き合ったかを分析し、言葉で伝えられる人
  • 面接官の3つの質問は、どれも国名では答えられない。留学先の名前で評価は上がらない
  • フィリピンは、費用を抑えて長く滞在でき、想定外のことが起きやすい。話の材料を作りやすい環境
  • 出発前に「自分は何を経験しに行くのか」を決めておくことが、帰国後の差になる

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この記事を書いた人

フィリピン留学Hub代表。2013年からフィリピン・セブ島留学の支援を続けて13年。自身も2度のフィリピン留学を経験し、TOEIC900・IELTS6.5を取得。

語学学校70校以上を現地で視察し、年間1,000件以上の留学相談に対応。学校の良い点も弱点も、見てきたまま正直に書いています。